【知ってると便利】ドイツのオリエンテーリングコースで学ぶこと

こんにちは!はねうさぎ(@haneusagi_com)です。

ドイツへ移民や難民として移住していた人のために、ドイツ語やドイツ文化を勉強する統合コース(Integrationskurs)の一部として、「オリエンテーリングコース(Orientierungskurs)」というものがあります。

ドイツに「移民」(または難民)として移住した私のような人(特に結婚により成人してから突然ドイツへやってきた人たち)には、2つのドイツ語コースが用意されており、この2つのコースを両方受講、またはテストの結果がドイツ在住を継続するにあたり、ビザの更新や滞在許可のステータスに関わってくるというものなのです。

今回は、私が実際に社会融合コースのうちのインテグレーションコースを受講して良かったなと思う事や実際にどのようなことを学ぶのかをお伝えします。

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目次

ドイツ移住者に用意されている「社会融合口座」とは

ドイツのオリエンテーリングコース(Orientierungskurs)は、ドイツで永住権や市民権を取得するために必要な統合コース(Integrationskurs)の一部。

コースは、ドイツの法律、文化、歴史について学ぶことを目的としていて、ドイツ社会への理解を深め、新たに移住した人々がドイツ社会にうまく溶け込むための支援を行います。

コースには2種類があり、この2つがセットとなって「社会融合講座」と呼ばれています。

1)Integrationskurs(インテグレーションコース):600授業時間のドイツ語学習の講習

※または集中講座を430授業時間受講

※27歳以下の移民・難民には、若者向けの「Jugendintegrationskurs」も準備されています

2)Orientierungskurs(オリエンテーションコース):60時間授業時間のオリエンテーション

移民局で言われたことは、インテグレーションコースは、受講しなくてもそれなりのドイツ語力があり、ドイツ語レベル中初級のB1テストの合格証明書をビザ更新と共にドイツ到着3年以内に提出すれば、次回のビザ更新の期間が長くなるというモノでした。

お住いの州や市町村によって違いがあるかもしれませんので移民局で確認しましょう!

私はドイツに来て初めて出たビザは1年、その後1年以内にB1を取ったので、2回目のビザ更新でB1テストの合格証明書を持参してビザ更新をしました。

その時に発行されたのが2年のビザで、3回目のビザ更新では永住権を申請できます、と言われました。

ただし、永住権の申請には「オリエンテーリングコース」の終了証と、通称「帰化テスト」と呼ばれる『Leben in Deutschland』という終了テストを受講し、生活に必要な最低限のドイツ語力と社会融合のための知識を身に着けた証として「社会融合講座終了証」を提出する必要があります。

ドイツのオリエンテーリングコースでは何をやるの?

オリエンテーリングコース(またはオリエンテーションコース)は、ドイツ語レベルとして最低B1以上の語学レベルが求められますので、このレベルに達している移民や難民の方向け、または近い未来にドイツ国籍を取得したい人向けに、ドイツの政治システム、そいつの生活習慣、ドイツの歴史的・文化的な事などを、ディスカッション形式で学びます。

文法やディクテーションなどの「語学を形式的に学ぶ」ことではなく、「ドイツと言う国の事を皆で考えディスカッションしながら知識を深める」授業が行われています。(少なくとも私はそう感じました)

具体的には、

  • ドイツの法制度、歴史、文化
  • ドイツにおける権利と義務
  • 社会における共存の形態
  • ドイツで重要な価値観。例えば、宗教の自由、寛容、女性と男性の平等な権利など。

ドイツの社会融合講座に参加することのメリット

©haneusagi.com

私が通っていたヴュルツブルクのVHSの私のクラスにはもう一人日本人の方がいらっしゃいました。

ご主人のお仕事の都合で家族で2年という期間限定で引っ越してきた方でした。

彼女の場合は、移住してきた「移民」や戦争や紛争でドイツへやってきた「難民」認定を受けた人ではないので、オリエンテーリングコースの受講は必須ではありませんし、テストも受講する必要がありません。

他にも婚姻関係はないけどドイツ人のパートナーがいるというロシア人の方も受講は不要と言われていました。

ただ、日本人の彼女はしばらくの間ドイツに住むので、オリエンテーリングコースでドイツの事を学びたいという事で授業に参加していました。

また、私達移民や難民の場合は、社会融合コースの費用はドイツ政府が約半額負担(難民の場合は全額?)してくれるので、テストも無料で受けることができるのですが、彼女の場合ですと、テストも受講料が発生するとの事で、終了テストは受けていませんでした。

つまり、EU加盟国以外からドイツに来た外国人がドイツの無期限滞在許可を申請するための条件の一つとして、ドイツ語能力、ドイツの法律や社会秩序、生活に関する基本的な知識を持っている必要がある(と、ドイツ政府が推奨している為)ので、政府が費用をいくらか負担してくれているというわけです。

自分たちの税金がこのように使われていると知ると、皆さんのお金を無駄にできないなあと思いますし、ドイツの将来にとっても有益な決断と言えるでしょう。

2005年1月1日以前にドイツの滞在許可証を取得している人は統合講座の受講は不要、EU市民も基本的には不要ですがドイツ語が話せず将来的にドイツ国籍を取得したい人は、コースに空きがあれば受講可能

さて、このオリエンテーリングコースで学ぶメリットは何でしょうか。

一番は、自分自身がドイツでの生活がしやすくなることだと思います。

そしてドイツで仕事をするチャンスが高くなるという事でしょう。

ドイツで就業すれば、社会的な接点もできますし、収入も得られて生活が潤いますし、ドイツ政府も若い移民や難民が働いて税金を納めてくれれば国が発展しますね。

また、シリアやソマリアなどからの移民が大量にドイツへやってきたことで巻き起こったドイツ国内の混乱もあり、例えば「民主主義とは何か」「投票によってリーダーを選ぶことの意義」「ドイツは一夫多妻制禁止」「子供に対するしつけ(暴力などの禁止)の考え方」「ドイツ人と宗教観」などなど、いわゆるイスラム教徒に正しい知識を身に着けてもらう意図が濃くうかがえました。

比較的日本とドイツでは法律も似ており一般的な認識が似通っている中、そうでない国・地域からドイツへ移住してきた人たちにとってはかなりカルチャーショックでしょうね。

実際にオリエンテーリングコースを受けてみて:毎日ドラマが巻き起こる!

オリエンテーリングコースでは、ドイツは連邦制を取っている(16個の州があり、その名前と位置、州都を覚える)こと、三権分離が行われている事、民主主義に基づく社会福祉国家であること、人権と平等が尊重され拷問労働や個人の所有物の侵害を禁じること、子供には教育を受ける権利と義務がある事など、がっつりと、ドイツの基本的な法律、政治システム、宗教や人権の尊重、社会福祉システムを学びます。

ドイツ連邦共和国基本法であるGrundgesetz(通称G.G:ゲーゲー)のアーティクル1は、ドイツ語と母国語で書いて覚えるように言われました。

日本語の部分はクラスメートの日本人の方のご主人が法律関係者ということで教えていただきました。

Die Würde des Menschen ist unantastbar.
『人間の尊厳は不可侵です』

参照:https://www.gesetze-im-internet.de/gg/art_1.html

私がオリエンテーリングコースを受講したのは2018年なので、当時はクラスメートの約半分はシリアからの難民たちでした。

シリア難民は、アルファベットも読めない、授業に意欲的でない、自己主張が激しい・・・など、色々とネガティブな噂を聞いてはいましたが、私のクラスはそういった人は少なかったと思います。

シリア人のクラスメートはみな優秀で、自国でも学校教師、病院勤め、IT企業などについていた方々で、親が大使館勤務だったなど裕福な家庭で育ったクラスメートもいました。

なので、一定以上の高等教育や専門教育を受けている人ばかりで、アラビア語、英語、トルコ語など多言語をあやつり、スマートな印象のシリア人クラスメートが多かったです。

つまりアルファベットが読めない人はいなかったです。

ただね・・・やはり自己主張が強いというのは、多かれ少なかれありました。

例えば、ドイツの選挙制度について学ぶとき、例えばドイツの習慣を学ぶとき、例えばドイツ在住の人たちの信仰宗教について学ぶとき。

「シリアは形式上は民主主義だと言っているけど、実際はアサドファミリーにしか投票できないようになっている」

とか

「シリアも義務教育制度があり6歳から小学校へ行くことになっているけど、多くの子供たちは学校へ行けず働いたり家の手伝いをしているから多くの子供が勉強していない」

などの話を聞くと「へ~!そうなんだー!」と思うのですが・・・(←ここは問題ない)

「私の娘は18歳だけど、たとえグループでも男性のいる中で親の同伴無しで遊びに行くことは許さない!」

とか

「ゲイカップル?何それ、そんなの許されない!!」

とか

「私はヤズィディーは宗教と認めない!!!あれはクソだ!」

ヤズィディー教とは主にクルド人が進行している太陽信仰の民族主教です

など・・・自分たちが「絶対正しく」て「それ以外はクソ」という価値観がチラホラ垣間見えるのです。

自分の考えを主張することは悪いとは思わないし、私は神道を信仰していて別に仏教徒ではないけど、なぜか仏教を馬鹿にされたときにはめちゃくちゃ腹が立ちましたね。

なんとなくアジアをけなされたように感じてしまいました。

つまり良くありがちな「一神教を深く信じている人間は多神教を信じている人間を馬鹿にする現象」です。

馬鹿にするというとちょっと語弊があるかもしれませんが、やはり1つのものしかダメ!と言われている人たちにとっては、他にも色々あるものを信じているという事がが理解できないようです。

なので、そういうトピックになると、口調がとても攻撃的になるんですよね・・・あのB1レベルのつたないドイツ語で良くディスカッションしたものだわ、と思いました(苦笑)

オリエンテーリングコースではナチスドイツ時代とヒトラーについても学ぶ

また、オリエンテーリングコースではがっつりと、ヒットラー率いる「ナチスドイツの時代」から第二次世界大戦~敗戦まで、そして、その後の民主化までの歩みもがっつりと学びます。

なぜナチスが頭角を現しヒトラーが人気だったのか。

なぜドイツは戦争を起こしたのか。

なぜナチスは強制収容所を作ったのか。

強制収容所ではどのような事が行われていたのか。

ヒトラー暗殺計画を企てた人間への報復・・・などなど。

強制収容所の実際の動画を交えながら、がっつりと暗く重く、痛々しい過去のドイツ政府と国民の暮らし、差別について知識をてんこ盛りにされるので、授業中に泣き出してしまうクラスメートもいました。

逆に「オレ、ヒトラーってかっこいいと思う」とか発言してしまうルーマニア人の男性もいて、先生が慌てて「そういったことは絶対に言ってはいけません!!」とあたふたしてしまう時もありました。

正直に言うと、自分自身もドイツの歴史の授業のあたりはなんだか悶々としてしまって食べ物もおいしくないというか、とても暗い気持ちになっていました。

とは言え、テレビや本で何となく一定の知識がある人は多いと思いますが、実際にナチスの歴史を時系列で、かつ周辺国との兼ね合いやドイツでの独裁政治が行われていた事実、罪もない人々への迫害の歴史を学んだことで、「なぜ現在のドイツ人がそれほどまでに民主主義に固執?!するのか」という日常的な疑問に対する理解が深まったのはとても良かったです。

ドイツの歴史と関連する「ドイツでやってはいけない事」に関しても以下別記事で書いてます。

時間があるなら受けるべき!ドイツのオリエンテーリングコース

私の場合は、オリエンテーリングコースはビザ更新と永住権取得に必須なので、コースを受講し終了テストも受けましたが、私の日本人のクラスメートのように、「興味があるから学んでみたい」と申し出て、許可されれば授業に参加できるはずです。

  • 夫や妻のドイツ駐在のために一緒にドイツへやってきた
  • 近年ワーホリや留学でドイツに着てそのまま結婚して家族ができた
  • フリーランスや起業でドイツに来た

という方に、とてもお勧めです。

長い間ドイツに住んでいる方は、大抵この授業でやる内容の知識は持っていらっしゃると思うのですが、ドイツ人と関わる機会が少ない方の場合、やはりこういった知識はなかなか学ぶ機会がないです。

このコースに参加することで、ドイツ人の考え方、なぜこういった文化があるのか、こんな時ドイツ人はどうしているのか、という事も先生が説明してくれますし、何よりクラスメートと意見交換もするので、ドイツ生活にとても役に立ちます。

また、ドイツ人と会話する時に、この授業で学んだことがすごく活かされているなと実感できます。

なぜならドイツの人はとっても政治に興味があって、大抵の会話は政治的な話になるからです。

私の場合、政治に関して自分は発言はできなくても、授業でやったから「あ~それでこういう風に考えるんだな?」とか「まあそういう歴史があったからしょうがないのか」など、自分の中で相手を受け入れることにもつながっています。

さらに、自分自身は母国に対してどう考えていた(いる)んだろう、とか、どんな政治観を持っているんだろう、という「自分発見」のきっかけにもなります。

コースでは、修羅場?ドラマ?ばかりの毎日でしたが、他の国からやってきたクラスメートと意見を交わした時間はとても貴重な体験でしたし、本当に受講してよかったです。

コースの最後は、テスト “Leben in Deutschland”を受講して終了する

このオリエンテーリングコースは、私にとっては興味深い内容でしたしとてもためになりましたが、多くのシリア人達は「つまらない~」と連発し、たまに休んだり遅刻したり早退している人もいました。

また、コースは、ドイツで永住権や市民権を取得したい人も受講して終了する必要があるので、他の若いEU市民も何人か受講していました。

EU市民であればドイツでは問題なく労働可能なため、コースを受講する必要は特にないのですが、将来ドイツ国籍を取りたいと考えている人は社会統合コースを修了してテストにパスする必要があるらしい。

日本人の自分にとっては、「おそらく日本がドイツの憲法を参考にしたのではないかしら?」と思うほど、三権分離から選挙システムから何から色々と似ている部分があるので、難しい単語は沢山出てきますが、理解しやすかったです。

最後に「Leben in Deutschland(英語でLiving in Germanyの意)」という終了テストを受講して終了証をいただいたら、基本的にドイツ語と社会融合のコースは終わります。

この「Leben in Deutschland」は、ドイツ全土に関する300問の質問と160問の州固有の質問の中からランダムに出題される質問に選択式で解答する33点満点のテストです。

バイエルン州に住んでいるのに、私の使っていた教科書はなぜかバーデンブルテンブルク州のものでしたが(苦笑)

テスト勉強は、教科書と別にテストの練習用ワークノートが別冊でついてきて、そこにテストの内容と回答が書いてありますので、ひたすら覚えるだけでした。

問題自体はあまり難しいものは無いのですが、ドイツ語の用語が難しかったので、私は何か勘違いして33点満点中の32点でした。くやしい~!

選択方式なので、よほどのことが無い限りは不合格にはならないと思います。

逆にこんな簡単すぎていいのかな?ドイツよ!と思いましたが、授業は楽しかったです。

テストは問題を解き終えた人から退出しても良いシステムだったので、私は開始してから25分くらいで終わって退出してご飯食べに行きましたw

このテキストは大事に取ってあります^^

もし、ドイツへ来てオリエンテーリングコースを受けるチャンスがあれば、強くお勧めします!

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