こんにちは!はねうさぎ(@haneusagi_com)です。
クリスマスディナーといえば、豪華な七面鳥のローストや華やかな料理を思い浮かべる方も多いでしょう。
私も日本にいた時のイメージはそうでしたし、アメリカに住んでいた時も七面鳥のローストか、「クリスマスハム」が定番でした。
ですが、ドイツでは意外にも「ソーセージとポテトサラダ」が定番メニューだということをご存じですか?
シンプルな食材の組み合わせながらも、家庭ごとに愛される理由があるのです。
さらに驚くべきは、ドイツのポテトサラダが地域や家庭によって多様なスタイルを持つこと。
この記事では、ドイツのクリスマス文化とポテトサラダの奥深い魅力をご紹介します!
驚きのドイツのクリスマスディナー
クリスマスといえば、牛肉や七面鳥のロースト、食べきれないほどの華やかなごちそうやデザートを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、ドイツでは意外にも「ソーセージとポテトサラダ」がクリスマスイブの定番メニューです。
この組み合わせを初めて知った人は驚くかもしれませんが、実はこれには深い理由があると言われています。
豪華な料理ではなく、ソーセージとポテトサラダ!?
ドイツでは、クリスマスのメインディナーを25日ではなく、24日(Heiligabend: 聖なる夜)に食べるのが一般的です。
この夜は、ディナーの後にクリスマスプレゼントを開ける時間でもあります。
ドイツのクリスマスイブの祝い方に関しては以下、別記事を読んでみてくださいね!
ドイツの家庭では、クリスマスイブは「家族で過ごす静かな時間」を大切にします。
そのため、手間のかからない料理が好まれると言うのです。
ある調査によると、ドイツで最も人気のあるクリスマスディナーは「Kartoffelsalat mit Würstchen(ポテトサラダとソーセージ)」だそうです(参照:Kartoffelsalat an Weihnachten – das ist der Grund)。
とてもシンプルですね。
何気にソーセージよりもポテトサラダが重要視されているところがスゴイ….
ポテトサラダは23日(前日)に作られることが多く、24日にはジャガイモに味が馴染んでより美味しくなります。
ソーセージは当日茹でたり焼いたりするだけで準備が完了しますからね。
何ともドイツ人らしいと言うか・・・(苦笑)
初めてこの事実を知った時にはかなり驚きましたが、ソーセージとポテトサラダは簡単に準備でき、家族全員がリラックスして楽しめる食事として、長年愛され続けています。
ポテトサラダとソーセージがクリスマスディナーの定番になった背景
このメニューが定番となった背景には、歴史的な理由があります。
特に第二次世界大戦後の物資不足の時代に、ソーセージとポテトサラダが手軽で栄養価の高い料理として広まり、それが定番となったと言われています。
シンプルな材料で家族全員をお腹いっぱい満足させられるポテトサラダとソーセージは、当時、経済的にあまり余裕がなかった多くの家庭にとって理想的なクリスマス料理だったのです。
なぜこれがクリスマスの定番に?
また、シンプルな食材で作られるこのメニューは、「豪華さ」よりも「家庭の温かさ」を象徴しています。
前日にポテトサラダを作っておいて、24日に簡単に短時間で調理することができるソーセージは、ドイツ人の生活スタイルにマッチしています。
多くのドイツ人にとって、クリスマスにご馳走を食べるということよりも、家族と一緒に過ごす時間が何よりも大切だからです。
そもそも、クリスマスはキリストの誕生を祝うイベントですから、豪華な料理を食べることよりも信仰的な意味合いを優先していた事も関連しているかもしれません。
教会での礼拝から戻って料理をする時間はあまり無いですからね。
ポテサラ論争勃発?!地域で異なるポテトサラダの味わい
ドイツのポテトサラダは、地域や家庭によって味付けやスタイルが大きく異なります。
南ドイツでは酢とオイルを使ったさっぱりとしたスタイルが主流ですが、北ドイツではマヨネーズを使ったクリーミーなタイプが人気。
どちらも「これが本物のポテトサラダだ!」と主張する人も少なくなく、まさに「ポテサラ論争」が勃発するほどです?!
この多様性こそ、ドイツの家庭料理の奥深さを象徴していると言えるでしょう。
マヨネーズ派?それともビネガー派?
上記に書いた通り、ドイツのポテトサラダには、大きく分けて2つのスタイルがあります。
一つは北ドイツで人気の「マヨネーズ派」。
濃厚でクリーミーな味わいが特徴で、ボリューム感たっぷりです。
日本のポテトサラダもマヨネーズ味なので、こちらに親近感がわく方も多いでしょう。
そしてもう一つは、南ドイツを中心とする「ビネガー派」。
酢とオイルを使ったさっぱりした風味が魅力で、お肉の付け合わせにピッタリで食事全体を引き立てます。
マヨネーズ味もビネガー味もドイツ全土で食べられていますが、一般的に、マヨネーズ味は北ドイツ一帯、ビネガー味は南ドイツ一帯という印象があります。
ちなみに、(南北)ポテサラ論争のエピソードとして、はねうさ夫のおじいさんには生前北ドイツの街ブレーメン出身のガールフレンドがいたのですが、彼女がマヨネーズ味のポテトサラダを作ったところ「まともなポテトサラダの作り方を知らないから、義理娘(はねうさ夫の母親)から正しいポテトサラダの作り方を教えてもらいなさい」と言われたくらい、おじいさんにはマヨ味には抵抗があったようです。
私の好みは、初めてドイツを旅行で訪れた時に食べたポテトサラダがビネガー味で、とても衝撃を受けるくらい美味しかったのと、現在南ドイツ在住という事もあって、ビネガー派。
このドイツの多様性がポテトサラダをさらに特別な料理にしているようにも感じます。
ドイツでは家族ごとの「秘伝のレシピ」があることも珍しくなく、それが食卓を囲む楽しみの一つとなっている家庭もあります。
私の義理母はお料理が上手で、はねうさ夫もそれは認めていますが「これは絶対に母親に言ってはいけない事なんだけど、ポテトサラダだけは、僕も妹も母親のポテトサラダよりもおばあちゃんのが好きだったんだ」とのこと。
ドイツ人にポテトサラダの感想を言う時は気を付けたほうが良さそうですね!(苦笑)
南ドイツで伝統的なビネガー味のポテトサラダが愛される理由
もともとドイツのポテトサラダは、オーストリアから伝わったと言われています。
記録によると、最初のドイツ語のポテトサラダのレシピは 1621 年にオーストリアの修道院から伝わったもの(参照記事はこちら:Kartoffelsalat: Mit Mayo oder Essig und Öl – Zwei Rezepte aus Nord und Süd)。
伝統的に、南ドイツやオーストリアでは、伝統的にビネガー味のポテトサラダが主流でした。
このスタイルが長く受け入れられてきた理由には、いくつかの歴史的・文化的背景があります。
まず、冷蔵設備が普及する以前、酢(ビネガー)は食品の保存に役立つ調味料として広く使われていました。
ポテトサラダにビネガーを使うことで保存性が向上し、家庭で長時間楽しむことができたのです。
さらに、南ドイツやオーストリアでは、素材の味を生かすシンプルな調理法が伝統的に好まれてきました。
ビネガーとオイルはじゃがいもの自然な風味を引き立てる調味料として理想的であり、このシンプルさが地域の食文化に合致していたのです。
また、ビネガーベースのポテトサラダは、18~19世紀のオーストリア・ハプスブルク帝国の影響を受けて広まりました。
当時、南ドイツもその文化圏の一部であり、食文化が共有されていたため、ビネガー味が定着したと言われています。
南ドイツの誇り「シュヴァーベン風ポテトサラダ」
南ドイツでは、ポテトサラダといえばビネガーとオイルを使ったさっぱりしたスタイルが主流で、特にシュヴァーベン地方で親しまれる「シュヴァーベン風ポテトサラダ」は、その代表例です。
このスタイルでは、ビネガーとオイルの他にスープストックを加えてじゃがいもに風味をしっかり染み込ませるのが特徴で、シンプルながら深い味わいが楽しめます。
私の作るポテトサラダも、このシュヴァーベン風です。
ブイヨンを入れると味がしっかりしてコクがでます♪
大好きなポテトサラダのひとつ。
調査によると、バーデン=ヴュルテンベルク州やバイエルン州の南ドイツでは、ビネガー味のポテトサラダの人気の方が、マヨネーズを使った北ドイツスタイルを上回っています(参照記事はこちら:Bei Kartoffelsalat gehen die Geschmäcker auseinander)。
特にバーデン=ヴュルテンベルク州では、スープストックを使ったシュヴァーベン風が地域全体の誇りともいえる存在で、伝統的な家庭料理として今も多くの人々に愛されているのだとか。
地域ごとの食文化の違いがこのシンプルなポテトサラダという一品に表れており、シンプルな料理でさえ、多様性が生まれていることに驚かされます。
南ドイツの人々にとって、このビネガー味のポテトサラダは単なる付け合わせではなく、地域のアイデンティティを象徴する特別な料理であり、クリスマスイブの食卓にも欠かせないこの一品は、南ドイツの伝統を色濃く反映していると言えるでしょう。
マヨネーズ味のポテトサラダが浸透したのは実は近年
一方で、マヨネーズがヨーロッパで広く普及したのは19世紀以降のことで、特に北ドイツやフランスからの影響を受けた地域で人気となりました。
私の経験上、バイエルン州から北上してチューリンゲン州に入って少し行くと、付け合わせのポテトサラダがビネガー味からマヨ味に変わるというイメージがあります。
また、旧東(DDR)地域だった場所の多くは、レストランに行くとマヨ味のポテトサラダが出てくる経験が多く、ベルリンもマヨ味が主流でした。
現代では、南ドイツやオーストリアでもマヨネーズを使ったポテトサラダが見られるようになりましたが、伝統的なビネガー味は依然として根強い人気があります。
家庭や個人の好みはあるとは思いますが、バイエルン在住8年目の私は、今のところバイエルン州内の外食先でマヨネーズ味のポテトサラダに出会ったことがありません。
特にクリスマスや家庭の特別な行事では、昔ながらのビネガー味が選ばれることが多く、地域や家庭ごとの味わいが今でも受け継がれています。
年齢や宗教による好みの違い
ここまでざっくりと北ドイツと南ドイツに分けて語ってきましたが、この「Bei Kartoffelsalat gehen die Geschmäcker auseinander(ポテトサラダは好みが分かれる)」という記事の内容によりますと、地域性はあるものの、年齢や宗教的な影響もポテトサラダの志向が分かれると言うのです。
年齢による傾向
調査によると、年齢によってもポテトサラダの好みに違いがあります。
55歳以上の44%がマヨネーズ入りを好むのに対し、18~24歳ではその割合が27%にとどまりました。
また、若年層では22%が「ポテトサラダを食べない」と答えており、世代間で大きな差が見られます。
宗教の影響
宗教的背景もポテトサラダの好みに影響を与えています。
ルター派のプロテスタントや宗教を持たない人々の間ではマヨネーズ派が多い一方、カトリック教徒の間では酢とオイルのスタイルが比較的支持されています。
また、ユダヤ教徒、正教徒、イスラム教徒の間では「ポテトサラダを食べない」と答える人の割合が他より高い傾向があります。
現代ドイツのクリスマスディナー事情
現代のドイツでも、ソーセージとポテトサラダはクリスマスイブに欠かせない定番メニューとして親しまれています。
特に忙しいライフスタイルの中で、簡単に準備できることが支持されている理由の一つのようです。
ドイツ人は時間の問題、食事への独特な価値観、キッチンを汚したくないなど様々な理由で家庭で料理をしない人も多いです。
特に南ドイツでは、多くの人がカトリック教徒であり、24日の夜はミサに参加するため、肉を避ける傾向があります。
そのため、魚料理がクリスマスイブの食卓の中心になることが一般的です。
私の住む地域でも、鯉やサーモンを食べる家庭が多いようです。
しかし、一部の地域では伝統が変化しており、肉を含むフルコースのディナーを楽しむ家庭も増えています。
アヒルやガチョウなどを使った料理がその例です。
また、オイルフォンデュやラクレットといった料理もクリスマスディナーとして人気が高いです。
これらも簡単に準備ができ、時間をかけて家族皆で食事を楽しめるし、自分の好きなものを好きなだけ食べる事ができるという点が共通しています。
日本とドイツの違い:「誰と食べるか」と「何を食べるか」
ドイツ人にとって、クリスマスイブの食事だけでなく、通常の食事でも重要なのは「何を食べるか」ではなく、「誰と一緒に食べるか」だと言う人もいるそうです。
食事の豪華さや特別感に重点を置くのではなく、家族や大切な人たちとの時間を静かに楽しむことが何より大切だとされているのでしょう。
一方で、日本では「誰と食べるか」に加えて「何を食べるか」も同じくらい重要視される傾向があると思います。
特にクリスマスには、家庭や恋人との特別な時間を彩る豪華な料理やケーキが登場することが多いですよね。
このように、料理そのものがイベントの一部として楽しまれるのが日本の特徴と言えるでしょう。
もちろん、家庭によって価値観の違いはありますが、「誰と何を食べるかの両方が大切」という考え方が多いのは、日本文化の特色かもしれません。
美味しい食べ物への追求心が半端ないのが日本人
これに対してドイツでは、「食べるものはシンプルでも構わない。その時間を一緒に過ごすことこそが重要」という価値観が見えてきます。
まとめ: ドイツ人はシンプルな幸せを楽しむクリスマスを好む傾向がある
ソーセージとポテトサラダが定番のクリスマスディナーだなんて、最初は驚くかもしれません。
という私は、今でも驚いていますし、日本人的感覚でそれは無微妙かも・・・(義理母が私と同じ感覚で助かった!)(笑)
美味しいもの食べたいもん♪
言い換えれば、それは豪華なごちそうよりも家族との時間を重視する、ドイツならではの心温まる文化とも言えます。
「ドイツ流のクリスマスディナー」は、シンプルで温かなひとときが楽しめる時間なのかもしれません。
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