こんにちは!はねうさぎ(@haneusagi_com)です。
ドイツ生活でよく聞くのが「ドイツは魚が少ない」「魚料理のバリエーションが乏しい」といった声。
実際、海とは無縁の南ドイツ・内陸部に住んでいると、日常的に魚を食べる機会は少なくなりがちですし、お魚の鮮度も微妙だったりします。
けれども、宗教行事や季節のイベントのタイミングでは、意外にも豊富な魚料理に出会えることがあります。
今回は、ドイツのキリスト教文化の中でも重要な「聖金曜日(Karfreitag:カーフライターク)」に提供されていた特別メニューを通じて、ドイツにおける魚の調理法やバリエーションの広がりについてご紹介します。
聖金曜日(Karfreitag)は魚を食べる日?

キリスト教徒が多いドイツでは、イースター前の金曜日(聖金曜日)はキリストの受難を偲ぶ日として、肉を避けて過ごす習慣があります。
代わりに魚を食べる文化が根付いており、多くのレストランではこの日に合わせた特別な魚料理のメニューを用意します。
そのため、普段はあまり魚料理が並ばないようなローカルのレストランでも、この日ばかりは魚づくしのメニューが登場し、バリエーションの豊かさに驚かされます。
とは言っても、リッチな海に囲まれた島国の日本のお魚のバリエーションとは程遠いですが、ヨーロッパという土地柄や輸入・輸送がスムーズになってきた近年では、ドイツのお魚文化も広がってきた印象を受けています。

実際のメニューを見て驚き!種類豊富な魚料理
カーフライターク(聖金曜日)にお散歩途中でビアガーデンをチェックしてみると、聖金曜日とその翌日の聖土曜日(Karsamstag)限定で、9種類もの魚料理が提供されていました。
当然ですが、聖金曜日はお肉を食べる事は自粛されています(なぜかビールはOKなようです)。
散歩がてら覗いてみたビアガーデン。
— はねうさぎドットコム (@haneusagi_com) April 18, 2025
さすがカーフライタークなので見事なお魚ラインナップ💖知らない名前のお魚もある。#ドイツ生活 pic.twitter.com/54GIE4lqRU
以下は、2日間限定メニューのリストと日本語訳、および簡単な解説です。
冷製・保存系の魚料理

- Matjes auf Hausfrauenart(11,80 €)
→ マチェスの家庭風
若いニシンを塩漬けにし熟成させたマチェスを、サワークリームやタマネギ、ピクルスなどで和えた冷製料理(と予想)。加熱はされておらず冷製で提供されます。ドイツでよく食べられている伝統的なニシン料理。
付け合わせ:塩ゆでポテト(Salzkartoffeln)
2. Bismarckheringe auf Hausfrauenart(11,80 €)
→ ビスマルク・ヘーリングの家庭風
酢漬けニシンを使った料理。こちらも非加熱で、冷たいまま提供されます。大抵はパンがついてきます。
※ビスマルク・ヘーリングは主に酢漬けタイプのニシン
ドイツでは、このような保存タイプの魚料理がよく食卓やイベントの屋台に登場します。
特にビスマルクヘーリングやマチェスは、瓶詰めや真空パックの状態でスーパーで手に入りやすく、調理の手間が少ないため、忙しい日やおもてなしの一品としても重宝されています。

冷たい食事「カルテスエッセン」の代表格ですね!
マチェスとビスマルクへーリングの違いは以下の記事でも書いていますのでぜひ読んでみてください。

温かい加熱調理の魚料理
続いて、メニューの3番目からの日本語訳と説明です。
3番目以降は、加熱調理した温かい食事です。
3. Filets vom Rotbarsch(13,80 €)
→ 赤魚のフィレ(白ワイン&オランデーズソース)
魚の説明:Rotbarsch = 赤魚(ヨーロッパ産の深海魚)。日本で言う「赤魚の煮付け」の赤魚と近縁。
付け合わせ:塩ゆでポテト
4. Filets vom Roten Knurrhahn(14,80 €)
→ ホウボウ(大西洋東・地中海や黒海に生息するヒカリホウボウという魚)のフィレ(溶かしバター&ホースラディッシュ入りクリーム)
魚の説明:ホウボウはヨーロッパのレストランで人気の白身魚。味が良く、ムニエルなどに向く。
5. Bachforelle, aus dem Wurzelsud(14,80 €)
→ 川マスのフィレ・香味野菜の酸っぱいスープソース。おそらく調理方法は蒸し焼き。
魚の説明:Bachforelle = 川マス(ブラウントラウトに近い)
※Wurzelsud:ニンジン・玉ねぎ・セロリ・パセリなどの根菜と香草で取ったスープ。私の住むフランケン地域では酸っぱい根菜のスープソースというイメージ。
6. Filet von der Lachsforelle, aus dem Wurzelsud(14,80 €)
→ サーモントラウトのフィレ・香味野菜の酸っぱいスープソース。おそらく調理方法は蒸し焼き。
魚の説明:Lachsforelle = サーモンマス。サーモンとマスの中間のような味わい。
7. Filet vom Kap-Seehecht, gebacken(14,80 €)
→ ケープヘイクのフィレ(揚げ)
魚の説明:Kap-Seehecht = 南アフリカ沖のヘイクという魚。タラに似た白身で、ふわっと柔らかくクセが少ない。スペインでは幼魚をペスカディーリャ(Pescadilla)というらしい。
8. Wildlachsragout „Regina“(14,80 €)
→ 天然サーモンのラグー「レジーナ風」
ムール貝、イカ、エビ入り/白ワイン&オランデーズソース仕立て/パスタ添え(おそらく平打ち麺)
9. Fang des Tages(15,80 €)
→ 本日の魚料理
赤ホウボウ、リモンデ(Limande=シタビラメの一種)、マスのフィレ盛り合わせ
溶かしバター、ホースラディッシュ入りクリームソース、塩ゆでポテト付き
これらはすべてしっかりと火を通した温かいメインディッシュとして提供されます。
サイドディッシュがジャガイモというのもドイツらしいですね(笑)
魚のドイツ語名のまとめ(聖金曜日のメニュー例)

ビアガーデンでみたお魚メニューから、ドイツ語での魚の名称と簡単な説明を一覧表にしてみました。
食いしん坊な私なので、初めて見た魚の名前もあり、調べるのが楽しかったです♪
ドイツ語名 | 日本語訳 | 説明 |
---|---|---|
Matjes | マチェス | 若いニシンを塩漬け・熟成した伝統料理 |
Bismarckhering | ビスマルク・ニシン | 酢漬けニシン、ドイツで人気 |
Rotbarsch | 赤魚 | ヨーロッパ産の深海魚、表面は赤オレンジ色で白身 |
Roter Knurrhahn | ホウボウ | 高級白身魚、煮ても焼いても揚げても美味しい(はず) |
Bachforelle | 川マス | 淡水魚、淡白でクセが無く食べやすい |
Lachsforelle | サーモントラウト | サーモンとマスの中間のような風味 |
Kap-Seehecht | ケープヘイク | タラに似た味の白身魚 |
Wildlachs | 天然サーモン | 養殖ではなく天然もの、味に深みがある |
Limande | シタビラメ | フランス料理でも使われる、柔らかい白身魚 |
お魚自体にはさほぼ驚くようなものはありませんが、調理法は日本人にとっては興味深いものがあります。
「保存派」vs「火入れ派」?ドイツの魚料理スタイル

今回のメニューを見て感じたのが、ドイツの魚料理には大きく2つのスタイルがあるということです。
ひとつはマチェスやビスマルク・ヘーリングのように「保存食」タイプの冷製料理。
これらは塩漬けや酢漬けで長期保存ができるように加工されたもので、家庭でも手軽に取り入れられています。
もうひとつは、赤魚やホウボウ、川マスなどを使った「加熱調理」タイプ。
こちらはレストランで温かい一皿として提供されるもので、ソースや付け合わせにも工夫が感じられました。
また、私の住むバイエルン州フランケン地域では、Wurzelsud(根菜と香味野菜のスープソース)に、「Blaue Zipfel(直訳で青い端)」という、ソーセージを香味野菜と酢で煮込んだ料理があるように、根菜や酢を使った酸味のあるだし文化が根付いています。

この「ちょっと酸っぱい根菜のスープソース」が、ご当地白ワインとよく合って美味しいです。
この背景には、古来の素材を保存する先人の知恵から発展した調理法・料理で、酢漬けや塩漬けなどの保存食的な料理スタイルが日常的に受け入れられており、冷製の魚料理もごく自然な存在として楽しまれています(参照:Blaue Zipfel im Wurzelsud)。
ドイツで手に入る魚は増えている?

数年前に比べて、ドイツのスーパーでも魚介類が手に入りやすくなってきた印象があります。
たとえば:
- 冷凍コーナーで買えるムール貝、サーモン、イカリング、エビ、タコ、ホタテなど
- 瓶詰めのマチェスや酢漬けニシン、スモークサーモン、スモーク鯖、魚卵など
- 一部の週末マーケットや大きなスーパーでは、お刺身や寿司に使える鮮魚(マグロ、サーモンを筆頭に色々)、新鮮な川魚(鯉、トラウトなど)、スモークされた川魚を扱う店も多数
- アジアスーパー(Go Asiaなど)では、赤魚、エビ、ホタテなどアジア料理に良く使う食材も
これらを活用すれば、ドイツ在住でも魚料理のレパートリーを広げることができます♪
特に、淡水魚よりも海水魚が好きな私には嬉しい❤
まとめ:ドイツでも魚料理は楽しめる!

「ドイツ=肉文化」というイメージがありますが、宗教的・季節的な背景を知ることで、魚料理の奥深さにも気づかされます。
聖金曜日のような特別な日には、地域のレストランでも本格的な魚メニューが味わえます。
また、伝統的に、ドイツレストランへ行くと日替わりメニューでは金曜日がお魚料理の事が多いです。
冷たい保存食系のニシンから、温かいサーモンや鯉料理まで、ドイツならではの食文化として楽めますよ!
ご当地のお魚料理を食べてみたい方はぜひ、その土地のドイツレストランを覗いてみてくださいね。
👇マチェスとヘーリングの違いについて詳しく知りたい方は以下のの記事もどうぞ!


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